【When The Past Was Around】セリフなしで、ここまで心を動かせる。絵と音で沁みる短編アドベンチャー

可愛い絵本風の絵柄に惹かれて、軽い気持ちで遊び始めた。
けれど、このゲームの魅力は見た目の良さだけでは終わらなかった。
美しい音楽、
ほどよい難易度のパズル、
そして心温まるのに少し切ない物語。
短いプレイ時間の中に、面白さがしっかり詰まっている作品だった。
イラストと音楽の完成度が高く、遊んでいるというより、
上質な短編映画を味わっている感覚に近い。
静かな夜にひとりで浸りたくなる、そんなインディーゲームです。

目次

ゲーム紹介

When The Past Was Aroundは、ポイント&クリック形式のパズルアドベンチャーゲームです。
画面内の家具や小物を調べ、仕掛けを動かし、手に入れた情報をもとにその場の謎を解きながら進んでいきます。

操作はシンプルですが、ただ順番にクリックするだけでは終わりません。
「部屋の中にある違和感」や「気になるモチーフ」を拾い集めて、少しずつ正解に近づいていく作りになっています。

プレイ時間はおよそ2〜3時間ほど
ジャンルとしては短編の物語重視アドベンチャーで、難しすぎないパズルと、セリフに頼らず感情を伝える演出が大きな魅力です。

プレイ体験

チュートリアルの印象:絵本のような世界に触れた、最初の数分

最初に惹かれたのは、やはり絵本のようなイラストでした。
やわらかい色使いと、どこか温度を感じるタッチ。それだけでも十分に印象的です。

ゲームを始めると、画面の中央にはひとりの女性と、真っ黒な人影。
手をつないでいる様子を見ると、家族なのか、恋人なのか、とにかく親しい関係なのだろうと想像できます。

ゲームとしてはクリック式のアドベンチャーですが、各ステージにはしっかりと謎解きが用意されています。
気になる場所を触って反応を見ながら、必要なアイテムやヒントを集めていく流れです。

最初の部屋を探索していると、鍵のかかった引き出しに行き当たります。
これがチュートリアルの中心となる謎解き。部屋の中を見回しながら手がかりをつなげていき、最後に“羽”を見つけたとき、
黒い人影のもやが晴れていきます。

もやが晴れて現れたのは、なんとフクロウの顔をした男性。
おそらく象徴的な表現なのだと思いますが、これが不思議なくらい自然に受け入れられる。
目がくりっとしていて、見た目も愛嬌があって可愛いです。

イラスト、ゲーム性、BGM。
どれも出だしの時点で完成度が高く、「これは最後までちゃんと楽しませてくれそうだ」と期待できるチュートリアルでした。

序盤の変化:物語の輪郭が見える

物語が動いたと感じたのは、優雅にバイオリンを弾いていたフクロウが消えた場面です。
主人公エダは、引き寄せられるように残ったバイオリンに手を伸ばします。
次の瞬間、不意に響く不協和音。空気が一変し、そのまま暗転して、お墓のシーンへ切り替わります。

そこで一気に気づかされるんです。
「あれ、この物語って、想像していたよりずっと切ない話なのでは?」と。

本作は、ただ可愛い世界を散歩するゲームではありません。
最愛の人を失ったエダが、思い出と向き合いながら少しずつ前を向いていく、その過程を描く物語だったのです。

刺さった瞬間:セリフがないと気づいた瞬間、完全に心を掴まれた

いちばん刺さったのは、過去の場面へ戻り、フクロウとの出会いが描かれるくだりでした。

どこからか聞こえてくる音楽に導かれるようにして近づいていく。
それはフクロウが演奏している音色でした。
聴き入っていたエダが、ふとした拍子にくしゃみをしてしまい、フクロウから、そっとブランケットを渡される。
たったそれだけのやり取りなのに、「ああ、ここがふたりの始まりなんだな」と自然に理解できる。

そして、その場面で気づきました。
このゲーム、セリフがない。

そこではじめて、自分が驚くほど物語に入り込んでいたことに気づいたんです。
普通なら言葉で説明されるような関係性や感情の流れが、仕草と音楽と場面転換だけで、きちんと頭に入ってきていた。

これはかなりすごいことだと思います。
文章で語らず、演出だけで感情を伝える。その難しさを考えると、本作の丁寧さと完成度の高さがよく分かります。

なぜ、セリフなしでここまで伝わるのか?

このゲームが強く印象に残る理由は、セリフがないことそのものではなく、セリフがなくても成立するように徹底して作られていることにあります。

まず、ひとつひとつのシーンが直感的に理解しやすい。
たとえばデートのような時間、お墓の前に立つ時間、誰かを想う時間。場面を見た瞬間に、
その空気や意味をある程度つかめるように設計されています。

次に、音の使い方が上手い。
フクロウの弾くメロディが作品全体を通して印象をつなぐ役割を果たしていて、ただのBGMではなく、感情を呼び起こす“記憶のスイッチ”として
機能しているんです。

さらに、イラストの差分や細かな仕草が多いのも大きい。
主人公の表情、手の動き、目線の変化。クリックしたときに切り替わる一枚絵にも情報が詰まっていて、
説明文がなくても人物の心の動きが伝わってきます。

そして、小物や部屋の中の配置そのものが、その人物の背景を語っています。
物を調べる行為が、そのまま物語理解につながっている。ここがゲームとしてとても気持ちいいところでした。

要するに本作は、楽するためにセリフを削っているのではなく、セリフの代わりになる手間を何倍もかけているんです。
だからこそ、作品全体に細部まで手が届いていて、短編ながら非常に密度の高い体験になっています。

一方で、こうした表現は万能ではありません。
ある程度、普遍的で想像しやすい感情の流れだからこそ成立している部分もあるはずです。
複雑な事情やひねった展開を言葉なしで伝えるのは難しい。
その意味では、本作は題材の選び方も含めて、かなり賢く丁寧に作られていると感じました。

微妙だなと思ったところ

正直、大きな不満はほとんどありません。

あえて挙げるなら、作中で空中に浮かぶ音符を押してメロディを鳴らす演出が何度か出てくるのですが、これは少し頻度が多く感じました。
演出自体はとても綺麗ですし、このゲームの象徴として機能している要素でもあります。
だからこそ、もう少し“ここぞ”という場面に絞ったほうが、より強く印象に残った気もします。

ただ、その一方で親切さはかなりあります。
例えば、この手のクリック式アドベンチャーは、「どこを触ればいいのか分からず、総当たりになってしまう」ことがありがちです。
自分もそこにストレスを感じやすいタイプなのですが、本作はヒント機能がしっかりしていて、触れる場所が分かりやすい。
雰囲気重視の作品でありながら、遊びやすさまできちんと気を配っているのは好印象でした。

向いている人、向いていない人

向いている人


短時間で、しっかり心に残るゲームを遊びたい人

可愛い絵柄や絵本風の世界観に惹かれる人

音楽や演出をじっくり味わいたい人

難しすぎないパズルアドベンチャーを探している人

セリフよりも雰囲気や感情表現で物語を受け取りたい人

こんな人は注意


✖高難度のパズルや歯ごたえの強い謎解きを求めている人

テンポの速いアクション性のあるゲームを遊びたい人

恋愛や喪失を題材にした物語が苦手な人

ストーリーを明確な言葉で説明してほしいタイプの人

一言まとめ

ゲームをクリアしたあと、きっとあなたも“あのメロディ”を口ずさんでいる。

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この記事を書いた人

お腹にじゃがいもを宿す男。
個人でゲーム開発をする傍ら、
プレイしたインディーゲーム感想ブログを運営中。
youtubeにて、簡単なゲーム紹介動画も作成しているので是非見てね!

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